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2012年6月4日月曜日

シナリオのためのアイデア抽出法

さて今回は、シナリオ制作の裏話などを一席。
シナリオ制作の方法などは人それぞれですが、友人からシナリオ構築の方法について相談を受けたので、参考程度に私の使っている方法の一つを紹介してみようかと思います。

私は多くの場合、シナリオは頭の中に導入のイメージを用意する程度にとどめて、ほぼアドリブでプレイヤーのノリや空気を見ながらセッションを組み立てるのが常なのですが、合宿などの特に気合の入ったセッションの場合は、少しだけシナリオを書くこともあります。
そんな時にたまに使うのがネットからシナリオフックを拾ってきて、そこからキーワードだけを抽出して全く別のシナリオに仕立てあげるという仕立て直し方式です。

呪われた屋敷・10

廊下に続くドアを開けた途端、4人は一瞬動きを止めかけた。覚悟はしていたものの、そこはもう既にざわめく鼠の大群に埋め尽くされようとしている。
「走るぞっ!」
レトの声を合図に、足元に群がる鼠達を蹴飛ばすようにしながら一目散に走り出す。ざざざ、と嵐の風が木々を揺らすような不気味な音を立てながら鼠達もぴったりと4人の後をついて来た。
転がるように階段を駆け下り、大広間を突っ切ってその先の小部屋へ向かい、先ほどレトが見つけた地下への扉を目指す。
大広間から続く扉をしんがりのエルディが無理矢理閉めたものの、一刻でも早くこの場を後にしたくて、レトはそのまま手にした鍵を床にある鍵穴に差し込んだ。どのみち大した罠などない事は既に先刻調査済みだ。
カチリと鍵が回り、床の扉が開く。床板を持ち上げるのももどかしく、4人は地下へとなだれ込んだ。

呪われた屋敷・9

「うわ、いっぱいあるし……」
「これ全部そうなの?」
魔法反応はかなりの数だった。1階、2階には点在していたり固まっていたりするが、どうやら飾ってある美術品や調度品も魔力の込められた物が多いようだ。
そして地下にも一カ所、5、6個ばかりの魔法反応が集中している事が分かった。
「…ん?何だこりゃ?」
レトはすぐ異変に気付いた。2階にある魔法反応の一つだけが、動いているのである。どこかへ向かっている訳ではなく、一定の範囲をふらふらと不規則に動き回っているようだ。場所としては先ほど自分達が入って来た倉庫の上にあたるので一番奥の部屋という事になる。
「ねぇ、これ何か変だよね?」
「ええ、いかにも」
眺めている間に、他の仲間達もその異変に気付いたらしい。
そして、振り返って見れば、眺めている間に早くも階下には小さな頭がずらっと並んだ黒い帯が出来始めている。

呪われた屋敷・8

広間を横切り、反対側に見えている階段を目指す。ちょうど広間の真ん中辺りにさしかかった時だ。
ざわざわと波のようなさざめきが起こり、4人を包み込んだ。徐々に大きくなるそのざわめきが、今まで静かに後をついて来るだけだった鼠達の鳴き交わす声だと分かるまでにそれほどの時間はかからなかった。
ほぼ同時に、おびただしい数の鼠達が一斉に4人めがけて飛びかかって来た。まるで全ての鼠達が同じ意思を持っているかのように一糸乱れぬその動きは、靄で出来た巨大な鼠のようにも見えなくはない。
「こいつらっ…魔物かっ!」
「ただの鼠ではなさそうですね……」
アルトとエルディが悲鳴を上げるその横で、冷静に武器を構えながらレトとバルニエが目線を交わす。
バルニエは長剣に魔力を乗せ、横一文字に鼠の群を切り裂いた。
ほぼ同時にレトも長銃に魔力を込め、群の中心を狙って撃ち抜く。
何匹かの鼠達がなぎ払われ、吹き飛んだものの、群全体から見ればごくわずかな数にすぎない。残った鼠達は気に留める風もなくこちらへ向かって押し寄せて来る。

呪われた屋敷・7

レトの後ろからひょいっと夜目のきくエルディが部屋を覗き込んだかと思うと、
「向こうにも足跡があるよー」
「……何だって?」
目をこらしてみると、やはり人型の足跡が部屋を横切って付いている。向こうにも別の出入り口があるらしかった。
しかしどちらにしてもはじめに見つけた足跡通りを辿る事に決め、右手へと戻った4人は足跡通りに途中の扉は無視して正面の扉へと向かった。
歩きながらアルトはふと後ろが気になって振り返ってみた。自分が臆病なのは重々承知している。それでも後ろに何かいるような気がして仕方がないのだ。背後を守るオークの向こうにいるのはやはり鼠達だけだったが、その数は少し多いように思える。ざっと見てはじめの部屋にいたのと廊下にいたのを合わせたぐらいか。だが正確な数を数えるより前に鼠と目が合ってしまったので、慌てて前に向き直った。
「ねぇ、何かネズミ増えてない?」
「んー、そう?」
声をかけられたエルディはあまり気にしている風もない。
「まあ、ただのネズミなのは分かったし大丈夫でしょ」
あっさり言うエルディにそれ以上何か言うとまたからかわれそうなので、アルトは気になりつつも後ろは見ない事にした。

呪われた屋敷・6

「……どういう事だろうな」
「何がー?」
考え込みながら口を開いたレトに、相変わらず何も考えていなさそうなエルディ。
「いや、一緒に行った仲間にすまないってのは分かるんだけど……自分の顔とか触って気にしてたってのは何だろうなと思ってさ」
「確かに、気になりますねぇ」
レトとバルニエの言葉にエルディも一瞬考え込んだが、
「あそこネズミいたよー。ネズミにかじられてないか気にしてたんじゃない?」
「別にネズミならそんな怖くないと思うけど」
怖がりのアルトの意外な発言に、
「分かんないよぉ、巨大なお化けネズミとかいるかもしれないよぉ」
と、わざと両手を広げて怖がらせて見せる。
「いやいや、そんなバカな」
レトが一笑に付したが、
「案外、間違っているとも言い切れないかもしれませんがね」
バルニエは真顔でそう告げる。
「何かあるのは間違いない訳ですし」

呪われた屋敷・5

「そいつらが逃げないうちに早く踏み込みたいとこではあるけどな」
「でもでも、夜になってからお化け屋敷に入るのは嫌だよぉ……」
「では昼間ならいいんですね?」
「昼間……でも、やだけど……」
なかなか意見がまとまらない。行くべき場所が決まった以上、早く行きたいところではあるが、灯りを点けてこちらが周囲から気付かれてしまうのでは本末転倒だろう。そんな中、
「入って寝るー!」
と、いきなりエルディが言い出した。
「えぇっ!?無理無理、絶対無理っ!」
「そ、それはかなり無謀なのでは……」
「うん、その発想はなかったな」
さすがに全員がざわめいていると、
「違う、帰って寝るって言ったの!」
エルディが顔を真っ赤にして訂正する。
「何だ、それなら分かるよ」
「ビックリさせないでよね……」
「いくらあたしでもそんな無茶しないってば!」
「エルディならやりかねませんからねぇ」
ともかく今夜は一旦戻ってまた明日出直そうという事に話が決まり、屋敷の敷地内から抜け出した4人はとっぷりと日の暮れた街中を引き返し始めた。