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2015年1月18日日曜日

ハロウィン・ラプソディ・人物紹介と感想

セッション日  2014年9月23日
ウィッチクエスト
マスター:とり


アリス(じゃすみん)
ノブナガ(Regulus)
「剣」のカードを暗示に持ち、戦いを恐れぬ勇敢さを持つ魔女アリスと、狭量ながらリーダー的な素質を持つ猫ノブナガ。

背は漆黒、腹は真紅という猫ノブナガのプレイヤーRegulusさん曰く、「黒赤は危険球かなぁと思いながらのネタ振り」だったそうですが、それをきっかけにゴスロリ少女(しかも厨二病)になった模様なのはなかなかに見事。

アリスのいうところのカボチャ「混沌より現れし陽だまりの以下略」だけは何度聞いても覚えられなかったので、このリプレイ書くためだけに辞書登録したのは内緒(笑)

普段は無口なアリスを、要所要所で的確に猫魔法を使いながらサポートするノブナガ、という、かなりとんがっている見た目に反した安定感のあるコンビです。


ルチュ(箱)
ティム(水葉)
「宇宙」のカードを暗示に持ち、冒険と混沌を楽しむ性格の魔女ルチュ。
心優しいがお調子者の猫ティムの毛並みはそれに合わせて、一見真っ黒ながら光に当たると青や緑に見えるという、さながら曹灰長石ラブラドライトのイメージにしてみました。

ルチュのプレイヤー箱さんは、私が初めてウィッチクエストをプレイした時のマスターさんで、普段も進んでウィッチクエストのマスターを引き受けてくださいます。

しかし、今回は久々のプレイヤーをフリーダムに満喫されたご様子で、ルチュは決断も早く、こうと決めたら突っ走るというタイプ。猫の方が頑張ってブレーキかけようとする役回り(笑)
これはこれでバランス取れた良いコンビだと思っております。


オルセ(我楽多)
リリア(NPC)
「杖」のカードを暗示に持ち、調和を重んじる魔女オルセ。

このパーティ随一の常識人であり、しっかりした性格でもあるため、いつも周りに気を配り、でも自分の意見はハッキリと言えるタイプ。魔女達と街人との橋渡しを上手く務めてくれていたと思います。

しかしマスター側でNPCとして用意した猫が、若さあふれるお高く止まった性格、そしてピンクでリボン柄という毛皮だけしっかり決めたため、スポーツ選手ながらお洋服フリフリ系というギャップが発生。
軽く嫌がらせかもしれない。

しかしさすがベテランプレイヤーらしく気にせず頑張ってくれました。
全体として見れば、自立したオルセに、干渉しないリリア、というイメージですね。


さて、ずいぶん久々のレポートアップとなりました。

これ以前に書きかけで放置しているレポートは2012年夏の物だという事に気付いてしまいまして、ウィッチクエストなら軽いしセッション時間も短かったし、比較的早く書き上がるだろうと思って書き始めたのですが、相変わらず無駄に長くなる私の文章……

レポート書き上がったのが今頃なのですっかり季節外れとなってしまいましたが、実際のセッションは昨年9月末だったので、マスターとしては時期にピッタリのお話を用意してくれていた訳です。
本来ハロウィンは万聖節の前夜祭ですが、この世界キリスト教ではないので……って、まあ難しい事はいいや、楽しれけば。

オンラインセッションだったので、魔女と猫がペアで進めるウィッチクエストは難しいのかなと思っていましたが、音声通話とどどんとふのおかげで全く滞りなくスムーズに進みました。技術の進歩ってすごいですね。
そして短い時間のセッションながら、プレイヤーも皆慣れたもので、それぞれカードの暗示と逆暗示を活かした個性的なキャラ立てになっています。

ストーリーはシンプルに迷いなく進められるものでしたが、クライマックスのパンプキングの説得で、アリスのプレイヤーじゃすみんが厨二的な言い回しを考え出すのに四苦八苦していたのが印象的でした(笑)

そして今考えると、カボチャ達のかけ声は「ハイル・キュルビス!」とかになるのが正解なのではなかろうかと思いつつ、セッションの場で盛り上がった「ジーク・パンプ!」をそのまま採用。何と戦うつもりだお前達。

今回もそんな楽しいセッションでした。
マスターとり、プレイヤー皆様、リプレイをお読みくださった皆様に感謝です。






2015年1月16日金曜日

ハロウィン・ラプソディ・6

そんな訳で、首尾良くカボチャを手に入れた一行は街に戻る事にした。

「アリス、それ持って帰るんでしょ?あたし先に行ってカボチャ来るよって伝えて来てあげるわよ。お菓子作る準備とかもあるでしょうしね!」
ルチュがそう言うが早いか、アリスの返事も待たず箒で飛び立つ。

「だーかーらぁー、スピード上げる時は事前にぃー……!」
同乗させられているティムの声もあっと言う間に遠ざかっていった。
菓子作りの準備があるなら、アリスを先に帰らせてルチュがカボチャを運んでも良さそうなものだったが、そんな発想はそもそもなかったらしく、思い付いたら即行動のルチュらしいといえばルチュらしい。


「手伝うわよ、アリス」
オルセが苦笑しながら声をかけた。
「ふむ…そこまで一刻を争うものでもないのだが」
アリスは考え込みながら口を開く。

「それよりは、ちと寄りたいところがある。そちらの方が時間がかかりそうだしな……」
「あら、どこ行くの?」
「……個人的な買い物だ」
そう言われてしまうと、ついて行くのもはばかられるので、オルセも他に出来る事がないか考えてみた。

「あ、じゃあ私も買い物に行くわ。あの子が着られそうな着ぐるみ、探しておかないとね」
「そうか。よろしく頼む」
こうして、帰りはそれぞれバラバラに街まで戻る事になった。


街まで戻って来たオルセは、その足でおもちゃ屋に向かった。
ちょうど子供向けのハロウィン衣装なども並んでおり、すぐにイメージに合ったウサギの着ぐるみを見つける事が出来た。大きさといい色合いといい申し分なさそうだし、作りや素材も割と良いもののように見える。

「おじさん、これいくら?」
聞いてみるとそれは少し値の張るものであったが、
「いいわ、もらって行くわね」
オルセは迷う事なく即金でそれを買う事に決め、プレゼント用に包んでもらった。


荷物を抱えて帰ろうとしたオルセだったが、ふと思い付いて回れ右し、また農家に戻る。

「あー、お前達はこっちの箱に入れ。そっちのお前達はあの木箱な」
オルセが戻った時には、主人とカボチャ達は早速忙しそうに出荷の準備の真っ最中だった。

主人に声をかけ、空き家で行うハロウィンのパーティーにパンプキングを出席させてもいいかと頼んでみる。勿論構わないという返事をもらったオルセは、王本人にもその話をしておく事にした。

「おお、話の分かる娘の友人ではないか!何、パーティーとな?」
パンプキング自身も上機嫌でパーティーに来る事を承諾してくれたので、安心したオルセは今度こそ帰る事にしたのであった。


一方、自分の買い物を終えたアリスが店に戻ると、先にルチュから報告を受けたファリーヌが準備万端整えて待っていた。

「ご苦労様、アリスちゃん。カボチャ手に入れてくれたのね。さあ、これから忙しくなるわよー」
また無言のままうなずくアリスも早速調理服とエプロンを身に着け、菓子作りの準備に取りかかるのだった。


それから1週間、ハロウィン当日まで、皆はそれぞれ空いた時間を使ってパーティーの準備を進めていた。
例えばオルセとルチュはパーティーのためにチラシを作って、ナバールやファリーヌの店で配ってもらう事にした。

「えっと、誰でも歓迎、参加自由!でいいのよね?」
「それは合ってるけど……ルチュ、作るのはパーティーのお知らせで、あなたの単独ライブのお知らせじゃないわよ?」

アリスは忙しい合間を縫って、パンプキングがくり抜かれてランタンになる瞬間に立ち会ったりもしていたが、基本的には菓子作りにかかりきりだったので、空き家をパーティーのために掃除したり飾り付けたりするのも、二人と猫達で協力して頑張った。


そしていよいよハロウィン当日の夜。

皆で忙しく最後の会場の仕上げや料理の支度をしていると、農家の主人に連れられてパンプキングとお供のカボチャ達がやって来た。
きれいに中身をくり抜かれ、顔を付けられた事により、表情が豊かになって嬉しそうなのが前よりもよく分かる。

アリスが進み出て、パンプキングの頭に冠を乗せた。自分の馴染みの衣装屋でパンプキングのためにこだわり抜いて特注した冠だ。先日カボチャ農家から帰る途中、買い物に寄って頼んでおいた品である。
さすがは話の分かる娘だとパンプキングもいたくご満悦のようだった。


お供のカボチャ達を会場の飾りに加えているところへ、今度はファリーヌが大荷物を持って到着した。

カボチャをたっぷり使った焼き立てのパイやタルトは勿論、クッキーその他の焼き菓子や、お土産に配る小分けにされたキャンディーの袋までたくさん用意されており、正にお菓子の山であった。

歓声を上げる皆に、店も忙しくて大変だったのだと珍しくアリスが愚痴るが、思う存分腕を振るえたとファリーヌは満足そうである。

ピンクのウサギのぬいぐるみを抱え、オルセの用意した着ぐるみを朝からずっと着ているルセリアもとても嬉しそうだ。


開始の時刻が近付くにつれて徐々に街の人々も集まってき始めた。

隣街から来るルセリアの両親を街の門まで出迎えに行っていたルチュも戻って来た。
今日もギターを抱え歌う気満々のルチュは、ここまで来る道すがら、ルセリアの好きだった曲を両親にたずねてみたりしたらしい。

「あら、そのぬいぐるみ……なくしてしまったと思っていたけれど、ここに忘れて行ってしまっていたのね」
ウサギの着ぐるみが抱えているぬいぐるみに目を留めた両親は顔を見合わせ、ついで着ぐるみを見つめた。
ややためらってから、黙ったまま着ぐるみをぎゅっと抱きしめる。

魔女達も黙ったまま微笑んでその様子を見守っていた。


やがてパーティーが始まる。
歌に音楽、お喋りに踊り、料理にお菓子。
賑やかな一晩が楽しく過ぎていった。


「ありがとうございました。あなた方のおかげで、もう一度あの子に会えた気がするんです」
ルセリアの両親は穏やかな表情で魔女達に礼を述べ、動かないただの着ぐるみに戻った着ぐるみとぬいぐるみを大事そうに抱きかかえて帰途に着いた。


「我らは重大な役目を全うする事が出来た、悔いはない。礼を言うぞ、話の分かる娘と友人達よ」
パンプキングも笑顔を浮かべたまま、お供のカボチャ達を引き連れて農家に帰って行く。


見送る魔女達には、ほんの少し寂しい気持ちが生まれていた。
しかし、感傷に浸っていたのも束の間。

「死者の祭典が終わったからには、次は聖者の生誕祭だ。また忙しくなる」
「うむ、また他の猫達にも喧伝する事としよう」
アリスとノブナガがすっと立ち上がり、
「私もそろそろ次の試合に向けて調整しなくちゃね!」
「またトレーニング?じゃあ木陰で見守っててあげるわね」
オルセとリリアが大きく伸びをし、
「よーし、今回新しい歌も仕入れた事だし、またガンガンライブするわよー」
「来月はパンケーキとパンの耳以外のご飯増やしてくれよなー!」
この場で早速ギターを構えるルチュを牽制するティム。


「あんたら、この家の中片付ける方が先だぞ」
「ああ、うちの店も急いで模様替えしなくっちゃねー」
ナバールとファリーヌが苦笑しながら皆を見やる。
祭も終わり、魔女達と猫達もこうして日常に戻っていくのだった。

「じゃあ私、片付けの間のBGM演奏してるからね!後よろしく!」
「……何だと?そういう事なら私は休憩に備えて菓子を焼きに行くぞ」
「ちょっとふたりとも!いいからふたりでこのテーブル持って、隣の部屋に運んでちょうだい!椅子?椅子はねぇ、確か台所に……」

ー了ー


2015年1月13日火曜日

ハロウィン・ラプソディ・5

滅多に見る事もないようなサイズのカボチャに近寄っていってみるが、見る限り普通のカボチャのようだ。
アリスとオルセが二人がかりでじっくりとカボチャを調べてみたが、やはりどう見ても普通のカボチャのようである。

カボチャを見ていても無駄なようだと見切りをつけたルチュは一人さっさと井戸に向かって歩き始めた。
そして井戸を覗き込もうとした途端。


突然、足元の地面が大きく波打った、かと思うと、
「待てぇーい!」
と、地の底を揺るがすような声が響き渡った。

思わず動きを止めた魔女達の目の前で、見る間に蔓が伸び上がり、巨大なカボチャを支えて持ち上がってゆく。
あっという間に魔女達の頭よりも高い位置にカボチャの頭が立ちはだかった。

「我が名はパンプ・キング!王の名にかけて、これより先には進ませぬぞ!」
見た目は普通のカボチャのままだが、堂々と名乗りを上げる巨大カボチャに、呆気に取られていた魔女達もやっと最初の驚きが収まってきた。

「つまり、カボチャの王様って事?」
「ねぇ、他のカボチャがみんなどこかへ行ってしまったのは、あなたの命令なの?」

オルセの問いかけに、巨大カボチャはうなずいてみせたようだ。
「いかにも、我が皆に避難指示を出したのだ」
「避難?何でまた?」
「何で、だと⁉︎」
ルチュの言葉にパンプキングが吠える。
「考えてもみよ!もうすぐまたあの忌まわしき祭りの日がやって来るではないか!」

「ん?それってハロウィンの事?」
「毎年毎年、祭りの度に、我が同胞達は何の罪もないのに頭をくり抜かれ、無残にも晒し首にされ……我は決めたのだ!今年こそは何が何でも同胞達を守り抜くと!」
既に相当激昂している王の決意はかなり固いらしい。

「人間どもよ、分かったら直ちに立ち去るが良い!さもないとただでは済まさぬぞ!」
言葉と共に太い蔓が空を斬って鞭のように唸りを上げる。仲間を守るためなら、戦いさえも辞さない構えのようだ。


どうしたものかと魔女達も困ってしまった。
王を名乗るカボチャを破壊する事も不可能ではないだろうが、容易ではなさそうだ。
かといって、勿論このまま帰る訳にはいかない。

「あのさー、お前ら、ほんとにそれでいいのか?」
迷った挙句、ティムがカボチャに向かって声をかける。

「祭りに使われないって事は、そのまま腐って枯れるだけって事だぞー?」
「だぞー、お前らほんとにそれで幸せかー?」
ルチュが、ティムの鳴き声を通訳したついでに、その口調を真似ておどけてみせる。

「な、なんだと…?」
虚を突かれたかのようにカボチャの王は一瞬声を失った。

「……混沌より現れし陽だまりのマリーゴールドたる豊穣なる大地の恵みの王よ」
今まで一言も発さずにいたアリスが重々しく巨大カボチャに向かって呼びかける。

「な、何だそれは、我の事か?……何だか格好良いな」
戸惑いながらもカボチャ王は、このアリス独特の呼び名がいたくお気に召した模様であった。

「貴様らには役目がある」
アリスは更に考えながら言葉を継いだ。
「死者達を導く灯火……唯一輝ける晴れ舞台だ」

「……灯火?晴れ舞台……だと?」
顔はないので分かりにくいが、カボチャ王は明らかにアリスの言葉に混乱して動揺を隠せずにいるようだ。

「そうだ。この死者達の祭典は、混沌より現れし陽だまりのマリーゴールドたる豊穣なる大地の恵み達にとって、最大の名誉となるはずだ」
「あー、まあ、他の野菜じゃ代わりにならないからねぇ」
「そうね、こればっかりはカボチャじゃないとね」
更にたたみかけるアリスに、他の二人も声を合わせる。

カボチャ王はすっかり沈黙し、考え込んでしまったようだった。

「我はずっと、同胞達が酷い目に遭わされているものだと思っていたが……それは、我らにとってこの上ない幸せだというのか……」
しばらくしてパンプキングはゆっくりとそうつぶやいた。
うなずく魔女達をもう一度見渡し、うなずき返してくる。

「分かった。我らは、我らにしか出来ぬ役目を果たそう」


納得した様子のカボチャ王と共に、皆で他のカボチャが隠れているという井戸へ向かった。
他のカボチャ達を驚かさないよう、カボチャ王も井戸に連れて入りたいところだが、このままではさすがに無理がある。


少し考えた末に、「小さくする魔法」と「軽くする魔法」をカボチャ王にかけ、一緒に連れて行く事になった。
次に猫達の魔法で暗闇を照らしつつ、空の井戸の底に降りてみると、地面の下を通路が横に伸びている。

そこを少し進むとすぐに大きな空洞に出た。
広い空洞をぎっしり埋め尽くすように、よく熟したカボチャがずらりと並び、幾つかは勝手きままにあちこちに転がっている。


皆がそこに足を踏み入れた途端、いきなり現れた人影に一斉にざわめくカボチャ達のあるものは怯え、あるものは怒り、それぞれこちらに敵意を向けてくる。
どうやら小さくなったカボチャ王をルチュが片手で持ち歩いているのがいけなかったようだ。

「皆の者、静まれーい!」
それでも王の一声でカボチャ達はすぐにおとなしくなった。

「聞け、皆の者!我らは、思い違いをしていたようであるぞ!」
頭をくり抜かれて並べられるのは屈辱ではなく名誉である事、他の野菜には出来ない役目である事、祭りを自分達の力で盛り立てる事……と、滔々とパンプキングの演説は続いた。

はじめは黙って聞いていたカボチャ達に、だんだん熱気と歓喜の声が湧き起こってくる。

「我ら、ついて行きます、王よ!」
「ジーク・パンプ!」
「ジーク・パンプ!」

大変な盛り上がりを見せるカボチャ達を安心して眺めつつも、魔女達はまた頭を悩ませていた。

これだけの量のカボチャを一体どうやって運んだものか。
井戸に入る時には転がり込めばそれで良かっただろうが、その逆にカボチャを井戸から持ち出すのはなかなかに難しい。

「……しょーがないなぁ、とっておきなんだけどな……」
ティムがぶつぶつ言いながら、猫の魔法の品物のひとつである猫バス乗車券を取り出す。
これは猫が運転する魔法のバスに迎えに来てもらい、好きな所まで乗せて行ってもらう事が出来るというとても便利なアイテムなのだ。

ただし、乗車券が足りないので全員で乗る事は出来なかった。
乗車券を切った瞬間に目の前に停車したバスに、カボチャ達を全部みっちり詰め込み、パンプキングから一番信頼されているらしいアリスが先導役に一緒に乗り込む。

そしてとりあえずは一旦農家の納屋にカボチャ達を収穫する事にした。そこからなら通常の手順で出荷出来る事だろう。


「皆の者、しばしここで待機だそうだ!」
バスから順番に降りたカボチャ達は、アリスとパンプキングの指示に従って順序良く納屋に収まっていく。

バスに乗らなかった残りの全員は再びカボチャ農家を訪れ、カボチャが無事戻ってきて納屋に並んでいる事を話した。
その様子を確認しに行くという主人について、皆でぞろぞろと納屋まで行ってみる。


「我らを作り給いし創造主が来られたぞ!」
「創造主様、万歳!」
「王様、万歳!」
「ジーク・パンプ!」

またもや一斉に騒ぎ出したカボチャ達を目の当たりにした主人は、しばらくは驚きのあまり、ぽかんと口を開けたまま言葉も出て来ない様子だった。

「おじさん、カボチャに慕われてるのね。愛情込めて育ててたんだね」
「この畑の魔力のおかげでちょっと変なカボチャになってるけど、出荷して畑を離れれば普通のカボチャに戻るから大丈夫よ、多分」
ルチュとオルセがそう言って笑いかけると、やっと主人も落ち着いたようだ。

「主。うちの店に来るはずだった混沌より現れし陽だまりのマリーゴールドたる豊穣なる大地の恵みだけ先にもらって帰っても良いか?」
「あ、ああ、ファリーヌさんとこか、ええと……」

アリスの言葉に主人はきょろきょろと辺りを見回していたが、
「お前達、南の一角の連中だな?この子と一緒に行くんだぞ、達者でな」
と、特別に艶の良いずっしりと重そうなカボチャを幾つか選んでくれた。

「達者も何も、全て菓子にして美味しく頂くがな」
「あ、ええっと、とにかくカボチャも見つかった事だし、急いで帰りましょう!」



2015年1月3日土曜日

ハロウィン・ラプソディ・4

空き家から出て来ると早速、ナバールの店に出向き、一番はじめに依頼を受けたルチュが代表して一部始終を説明した。

「そうか、あれはやっぱり、前あの家に住んでたルセリアちゃんだったのか……」

はじめはさすがに驚いた様子だったが、人のいいナバールはそう言って言葉を詰まらせている。

そして、隣街へ越して行った両親に宛てて手紙を書くと申し出てくれた。
幽霊となっているルセリアの事は伏せたまま、空き家でパーティーを行う許可と、もし良ければ思い出のあるその家でのパーティーに招待させてほしいという内容にするという。

妥当な内容だろうと判断した一行は、それはナバールに任せる事にした。

「そうと決まれば、パーティーの準備しなきゃね!」
「そのためにも、早くカボチャを手に入れなきゃ!」
こうしてようやく本来の目的地である八百屋へと向かう。


八百屋へ着くと早速、アリスがつかつかと店主に歩み寄っていった。

「主!混沌より現れし陽だまりのマリーゴールドたる豊穣なる大地の恵みはどこだ!」
「は、はぁ!?」
いきなり呪文のような言葉をまくし立てられて目を白黒させている店主の元に、
「あ、えーっと、私達、カボチャを探しに来たんです」
「ファリーヌさんのお店に、まだカボチャが届かないそうなんですよ」
オルセとルチュが慌てて通訳に入る。

「ああ、カボチャの事かぁ」
店主はうなずいたものの、またすぐに顔を曇らせてしまった。

「悪いが、カボチャはうちにもまだ入荷がないんだよ。農家さんに聞いても、なくなった、って言われるだけで、どうにも要領を得なくてねぇ…」
すっかり弱り切った店主の様子に、皆顔を見合わせる。どうやらこれ以上、ここで分かる事はなさそうだ。

「では主、混沌より現れし陽だまりのマリーゴールドたる豊穣なる大地の恵みを育みし恵みの大地はどこだ!」
「あー、はいはい、カボチャ畑だね。お嬢ちゃん達が見に行ってくれるのかい?そりゃ助かるよ、こっちも手が離せなくてねぇ」
アリスの物言いにもすぐに慣れた様子の店主からカボチャ農家の場所を聞いた一行は、すぐにそこを目指す事にした。


畑は街外れの門の外にあるらしく、歩いて行ってはだいぶ時間がかかってしまう。
そこで皆は魔女らしく箒で飛んで行く事にした。歩くよりは相当早い。

しかし、箒で空を飛ぶためにはやはりそれなりの技量が必要である。魔女の基本的な力のひとつとはいえ、 そこそこ難しいものなのだ。

アリスとルチュは、それぞれ自分の箒に猫も一緒に乗せ、地面を蹴ってふわりと宙に浮き上がった。そのままバランスを取って、街外れ目指して飛び始める。

ところがオルセは今日に限ってどうも調子が悪く、上手く空に舞い上がる事が出来ずにいた。普段、仕事でも空を飛んでいるというのに、いざという時に飛べないというのはちょっとしたショックである。

他の二人の姿はみるみるうちに遠ざかっていった。徒歩で行くのではとてもではないが追いつけそうにもない。

「置いて行かれちゃったわよ?」
リリアが冷ややかにオルセを見上げる。
「うーん、今日はどうやっても飛べそうにないわ。でもこのままじゃはぐれちゃうし……リリア、お願い!」
「もう、しょうがないわねぇ……」

手を合わせるオルセに大げさに溜息をついてみせてから、リリアは何やら鳴きながらピンクの尻尾でくるりと円を描いた。

たちまち何もない空中に黒い穴が出現する。これは猫魔法のひとつ、「ねこあな」というもので、穴をくぐった猫と魔女は、ただちに好きな場所へ移動出来るという便利なものだ。

しかしねこあなを通るのは魔女にとって恥ずかしい事とされているので、他の人に見られないように入らなければならない。
周囲に人の気配がないのを確認し、こっそりとねこあなに潜り込むオルセであった。


その頃、先を飛んでいる二人は、街の中心に差し掛かっていた。
街の中心には広場があり、その少し先に大きな時計塔が建っている。

時計塔の脇を飛んで抜けようとした魔女達の耳に、ひゅうひゅうと風を切る音に混じってぎゃあぎゃあと耳障りな鳴き声が聞こえてきた。
目をやれば、時計塔に留まっていた数羽のカラスが、明らかに気が立っている様子でこちらに向かって飛んでくる。どうやら攻撃を仕掛けてくるつもりのようだ。

カラスの爪や嘴が届く前に、アリスは空中で戦うキャットファイトを選んだ。速度を落とし、迎え討つ体勢を整える。

「我が尾の力、受けてみるがいい!」
アリスの考えを察したノブナガがいち早く箒の上で身を躍らせ応戦する。
自分の尻尾を弓と化し、魔法で出現した矢を射る事の出来る猫魔法、「尻尾の弓」だ。
魔法自体の効果に加え、ノブナガは自分でも尻尾を鍛えて強化しているので、その威力はなかなかのものである。

一方、ルチュの方はいちいちカラスなど相手にする気はさらさらなかった。迷いもせず一気に速度を上げて飛び抜ける事を選ぶ。

「スピード出す時は事前に言えよぉっ!」
あわや振り落とされそうになったティムが慌てて箒にしがみつくが、ルチュはそのまま速度を上げてカラスを振り切る事に成功した。

ノブナガの矢が見事に命中し、カラス達が怯んだ隙に、アリスもスピードを上げて牽制に入る。
気勢を削がれたカラス達を置き去りにして、何とかこの場を切り抜ける事が出来たようであった。


こうして二人がカラスをやり過ごし、街外れまでやって来ると、そこには既に到着していたオルセが待っていた。

「別の道から来たの?いつの間に追い越されたのかしら」
「さすがは熟達の競技選手、なかなかやるな」
「あー、うん、私も今着いたとこよ」
二人の言葉に苦笑いで答えるオルセ。

「それより、どうしましょうか?」
周囲には広い畑が広がっているが、一面、青々とした葉っぱが茂っているばかりだ。よく見ればあちこちに実をもいだような跡が残る蔓も目立つ。

そして少し離れた所にぽつんと一軒の家と小屋が建っているのが見えた。きっとあれがカボチャ農家なのだろう。


とりあえずカボチャ農家へ向かい、話を聞いてみる事にする。

農家の主人はほとほと困り果てた様子で、一週間ほど前の満月の夜、出荷間近のカボチャが一晩のうちに忽然となくなってしまったのだと話した。
とてもではないが一度に全部運び切れるような量ではないというのだが、原因は分からないままカボチャが全て持ち去られてしまったようだという事実に変わりはない。

しかし主人のいう事には、一番北の端にあるカボチャが一株だけ、残っているらしい。

話を聞いても謎は解けないままなので、魔女達は自分達で調査を進めるべく、もう一度畑に戻った。

「つまり、一週間前に何があったか分かればいいのよね」
そのためにどうすればいいかあれこれ考えた末に、オルセが普段から趣味で持ち歩いている小型の写真機を取り出した。写真機に魔法をかけ、問題の晩に何があったのかを撮影してみようというのだ。

一週間という時間を遡るのは少し難しい試みであったが、この畑に満ちている強い魔力と、リリアが手助けに入る事により、オルセの魔法は見事に成功した。


早速、写し出された何枚かの写真を皆で覗きこんでみる。そこにはまだきちんとカボチャが写っていた。

しかしそのカボチャは皆、蔓を切り、畑から抜け出し、一列に並んでごろごろと北の方を目指して転がっていっているのであった。
見る限り、誰かがカボチャを運んでいる訳ではなく、カボチャが自力で移動していったようだ。
何とも不可思議な光景だが、この場所には強い魔力が満ちているようだったし、ありえない話ではない。


とりあえず、写真に沿って自分達も北の方へ歩いていってみる。

すると果たして畑の一番外れには、農家で聞いた通り、一株だけカボチャが残っていた。
差し渡し1メートル以上はあろうかという、かなり巨大なカボチャだ。

そしてその向こうには、井戸があるのが見えた。