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2012年6月4日月曜日

呪われた屋敷・4

「ほらぁ、やっぱり入っちゃダメってみんな知ってるんだよぉ」
そう言いながらオークの陰に隠れるアルトには構わず、レトが膝を落として男の子と目線の高さを合わせる。
「お兄ちゃん達はね、人を探してるんだ。その人達がここに入って行ったかもしれないんだ」
「誰かここに入って行った人を見ませんでしたか?」
レトの後ろからバルニエが聞くと、男の子はしばらく考えていたが、
「んとねー、神殿の人が何人かと……友達が2人」
「え?お友達も入って行っちゃったのか?」
「うん、ずっと前だけどね。後ねー、フード被って重そうな荷物を持った人達が4人」
その言葉にレトとバルニエが、
「それだ」
「…それですね」
と、顔を見合わせた。

「お兄ちゃん達ここに入るの?じゃあ入れる場所教えてあげるよ。普通の入り口は閉まってるから」
男の子はそう言って返事も聞かず歩き出す。4人がついて行くと、屋敷の側面の生け垣、地面すれすれの辺りに人ひとりが無理矢理くぐれそうな穴が開いていた。言われなければ気付かず見落としてしまいそうな穴だ。
「このまま真っ直ぐ行くとねー、おうちの中にも入れるよ」
生け垣の穴を指差しながら男の子は得意そうに教えてくれた。
「その代わり、中でボール見つけたら持って帰って来てね」
どうやらなくしたボールを拾って来て欲しくて入り口を教えてくれたらしい。
「あぁ、分かったよ」
レトが簡単にうなずくと、
「ありがとー。じゃあ暗くなると怒られるから僕帰るねー」
男の子はぱたぱたと手を振り、
「頑張ってねお兄ちゃん達ー。怖がりのお兄ちゃんも頑張ってねー」
「怖がりじゃないやいっ!」
アルトがオークの後ろから顔だけ出して怒鳴るが全く説得力がないそしてその叫びを全く気にする事なく走って行った男の子の姿はすぐに見えなくなった。
「じゃあ、せっかくだし早速行ってみるか」
「うん、行こー行こー!」
「ええぇ、やっぱり行くのー?」
「おや、怖がりじゃないんですよね?」
そんな事を言いつつ、生け垣をくぐり抜けると、雑草が伸び放題の荒れ果てた庭に出た。
その先の壁には特にドアや窓は見当たらなかったが、言われた通り真っ直ぐ近付いて行くと、壁が一部裂けたように崩れている箇所がある。確かにそこからならどうやら屋敷の中にも入れそうだ。
壁際まで近付いて行って中の様子を探ってみようとしたものの、
「うわ、真っ暗だ……こりゃ灯りがないと無理だな」
そう言って立ち止まったレトの脇を、
「えー、あたし平気だよ?」
エルディが言いながらすたすたと抜けていく。ドワーフなので暗闇でも全く問題なく普通に目が見えるのである。
そのまま何のためらいもなく壁の裂け目に頭を突っ込もうとするエルディに、
「……入った人は消えちゃうんだよぉ……頭入れた途端に頭だけなくなっちゃったらどうするのぉ?」
本気なのか冗談なのか分からないがアルトは大真面目に怖がっているようだ。
「怖っ!それはさすがに怖い!エルディのデュラハンだな!」
「普段使わない頭でもなくなると困りますからねぇ」
「もー、みんな好き勝手な事言うのやめてよねー!」
それでもエルディは壁に頭を突っ込み、中を覗いてみた。
そこはどうやら小さな空き部屋のようだ。
目の前には板張りのがらんとした空間が開けており、正面に扉があるのが見える。だが右手はすぐに壁になっており、左手の方にも壁だけしかない。
埃の積もった床の上を走り回っていた数匹の鼠が突然のエルディの侵入に驚いて部屋の隅へ駆けていくが、そこからいなくなるでもなく隅の方をちょろちょろしている他は、特に目立つものもなかった。
「何か見えたかー?」
「んー、あんまり何にも」
レトに声をかけられ、言いながら仲間達の方へ向き直る。
「ネズミしかいないよー。あ、ドアはあったけどね」
「…まあ、いきなり探してる奴らがいてもそれはそれでビックリだけどな」
「エルディ、大丈夫……?」
恐る恐る聞いてくるアルトに、
「うん、何ともないよ」
普段と変わらない調子であっさり答えるエルディ。完全に中に入った訳ではないとはいえ、今の時点では問題はなさそうだ。
「どうします?だいぶ日も暮れてきたようですが」
バルニエの言葉通り、辺りは少しずつ暗がりに沈みつつある。しばらくしたら完全に真っ暗になってしまう事だろう。

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