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2012年6月4日月曜日

呪われた屋敷・3

「さてさて……」
商館から出て来たバルニエが仲間の顔をぐるりと見回す。
「まずどこから探しますかね?」
「そうだなぁ……」
レトが宙を見上げて考えるが、そう長く考えるまでもなく、
ひとまずそいつらを見たって人がいないか聞いて歩くしかないんじゃないかと思うよ」
レトの言葉にアルトもうんうんと長い耳を揺らしてうなずいている
「まあ、妥当な線ですね」
そこで4人は早速街中で聞き込み調査を開始した。
調査の結果、街の北側でそれらしき人物の目撃情報が複数浮かび上がってきた。
それは「3日ほど前に見た」というのがほとんどで、どうやらそれ以降は目撃されていないようだ。
その4人組はフード付きのローブをすっぽりと着込んでいたそうなので、外見の特徴はよく分からないが、そのうち1人は重そうなトランクを持っていたという。この辺りでは見慣れない人物だったというし、まず間違いはないだろう。
街の北側というのはまだ復興の手がほとんど入っておらず、ぽつぽつと昔の住人が戻って来て住んでいる程度で、空き家となっている建物も相当数あるらしい。
「この中から絞り込むのは厄介ですねぇ……」
「えー、空っぽの家だったら入っても別に怒られないでしょ?」
「……片っ端から入ってたらすごく時間がかかると思うけど……」
「うーん、とりあえずもう少し情報を集めるか?」
そのようにして尚もその辺りの住民に話を聞いて回っているうち、4人は興味深い話に行き当たった。
「あんたら、こっから先に行くなら、一つ気を付けた方がいい屋敷があるぜ」
と、その男は真顔で忠告してくれた。見たところ、実直そうな職人のようである。
「何かあるんですか?」
バルニエが如才ない笑顔で聞き返すと、彼は急に声を潜め、4人をぐるりと見回した。
「うん、実はな、呪いの屋敷があるんだよ……」
「ほう、呪いの屋敷とは?」
彼の話によると、その屋敷は15年前の戦で街が放棄されるだいぶ前から廃屋となっているというのだった。
屋敷の持ち主はアークという名の商人で、ルオ商会を一方的にライバル視していたらしい。ルオの方が商才があるのは周囲から見ても明らかだったが、アークは手段を選ばない強引な手法で商会を大きくしていったそうで、敵も多かったという。
「で、そのアークさんがな、ある高位の魔術師を目のかたきにしてて……噂だと、とうとう自分の屋敷で殺しちまったらしいんだな」
勿論、真相は定かではない。しかし信憑性のある噂だったと彼は言う。
「それからしばらくして、アークさんはじめ屋敷にいた商会の人間も、使用人も、みぃーんな消えちまったんだよ」
そして、その後調査などのために屋敷に立ち入った者は、誰一人として帰って来ないのだという。
「あの屋敷に入った者は帰って来ない。これは噂じゃなくて実際そうなんだ。だから、あんたらもあの屋敷だけは入らない方がいいぜ」
「ははぁ、なるほど」
そういった話を聞いた後で外に出た4人はお互いに顔を見合わせた
「どう思います?」
「思いっ切り怪しいと思うよ、オイラは」
「入っちゃダメって言われると、入ってみたくなるよねー」
バルニエの言葉にレトとエルディが即答したが、
「でもでも、入った人は帰って来ないって言ってたよ?」
怖がりのアルトだけは怯えた様子で尻込みしている。
「そもそも、その噂が本当かどうか分からないだろ?泥棒達が人を遠ざけるためにわざと流した噂かもしれないし」
ところが、その屋敷についても聞いて回るうち、どうやらその噂は本当らしいと分かって来た。
「うわー、やっぱりぃ……」
アルトはますます嫌そうにしているが、こうして話を聞いているだけでは埒があかない。
ひとまず情報収集は十分だと判断した4人は実際にその屋敷を見に行ってみる事にした。

それはさほど大きな建物ではなかったが、2階建ての豪奢な屋敷だった。かつてはこれでもかと飾り立てていたのかもしれないが、崩れかけた建物にツタがところかまわず絡みついてうらさびれた雰囲気である。
正面に一つだけある門は固く閉ざされ、立ち入り禁止の札が下げられている。それを見るとどうやら、ザイアの神殿がこの屋敷を管理しているらしかった。
街の復興の中心団体の一つがザイアの神殿であるからそれは別に不思議ではない。
入りたかったら先にザイアの神殿に行かなきゃいけないって事ー?
「奴らが神殿に許可を取る訳ないよな。って事は他に入れる場所があるのかもしれないな」
4人がそうして屋敷の周りを観察していた時だった。
「ねぇ、お兄ちゃん達ー」
後ろからの声に振り向くと、小さな男の子が1人立っている。
「ここは入っちゃいけないんだよ、入ると出て来られなくなるんだよー」

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